2025.5.12
インプラント
「インプラント治療を検討しているけれど、老後のことを考えると不安」という声をよく耳にします。インプラントは快適な食生活を取り戻せる優れた治療法ですが、高齢になってからのリスクを事前に知っておくことが、後悔しない治療選択につながります。
本記事では、老後のインプラント治療で起こりうるデメリットや介護時のリスク、そして失敗しないための対策について解説します。

老後のインプラント治療で直面する5つのデメリット
外科手術に伴う身体的負担と感染症リスク
インプラント治療では、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術が必要です。身体への負担は抜歯と同程度とされていますが、高齢者の場合は注意が必要です。
加齢により体力や回復力が低下するため、手術後の治癒に時間がかかります。また、免疫力の低下により感染症のリスクが高まる傾向にあります。高血圧や心臓病などの持病がある場合、手術自体が難しいと判断されることもあります。
糖尿病や骨粗鬆症など持病による結合不全
インプラントの成功には、顎の骨とインプラント体がしっかり結合することが不可欠です。しかし、高齢者に多い持病がこの結合を妨げることがあります。
糖尿病の場合、血糖値のコントロールが不十分だと傷口の治りが悪くなり、感染リスクが高まります。骨粗鬆症により骨密度が低下していると、インプラントを埋め込む十分な骨が確保できず、骨造成という追加手術が必要になることもあります。骨造成手術は高度な技術を要するため、すべての歯科医院で対応できるわけではありません。
持病や健康状態が治療計画にどのような影響を与えるのか、詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
認知症や要介護時のセルフケア困難とインプラント周囲炎
老後のインプラント治療で最も懸念されるのが、認知症や要介護状態になった際のケアの問題です。
インプラントを長持ちさせるには、毎日の丁寧な歯磨きと定期的なメンテナンスが欠かせません。認知症を発症すると、口腔ケアの重要性を理解できなくなり、セルフケアが困難になります。要介護状態では通院も難しくなり、施設入居後も十分なケアが受けられないことがあります。
セルフケアが不十分になると、インプラント周囲炎を発症するリスクが高まります。これはインプラント周囲の歯茎や骨が細菌に感染した状態で、天然歯の歯周病より進行が速く、自覚症状が出にくいのが特徴です。初期段階では痛みがほとんどなく、気づいたときには重症化していることも少なくありません。悪化すると、インプラントを支える骨が溶けて脱落してしまうこともあります。
年金生活における高額な治療費と維持費の圧迫
インプラント治療は保険適用外の自費診療で、1本あたり30万円から50万円程度が相場です。複数本では100万円を超えることも珍しくありません。
年金生活では収入が限られているため、この高額な治療費は大きな負担です。さらに治療後も定期的なメンテナンス費用が継続的に発生し、トラブル時の再治療費用も考慮する必要があります。
トラブル発生時の撤去や再治療の難易度
インプラント周囲炎が進行した場合や、インプラントが破損・脱落した場合には再治療が必要です。再治療では外科手術が伴いますが、高齢になると手術後の回復が遅く、感染症や合併症のリスクも高まるため、再治療の難易度が大幅に上がります。
体力や持病によっては手術自体が受けられないこともあり、治療の選択肢が限られてしまいます。
10年・20年後を想定したインプラントと入れ歯の比較

食事の質とQOL:噛める喜びはインプラント
食事の楽しみという観点では、インプラントに大きなメリットがあります。
インプラントは顎の骨に固定されているため、天然歯に近い噛み心地を実現できます。硬いものや粘り気のあるものも制限なく食べられ、食事の質が大きく向上します。よく噛むことは脳への刺激につながり、認知症予防にも効果があるとされ、栄養状態の改善にも貢献します。
一方、入れ歯は噛む力が天然歯の30~40%程度に低下し、食べられるものに制限が出ることもあります。
介護現場での管理:着脱可能な入れ歯の利便性
介護が必要になった場合の管理のしやすさでは、入れ歯に軍配が上がります。
入れ歯は取り外しができるため、介護者が清掃しやすく衛生的に保つことが容易です。不具合が生じた場合も、修理や作り直しが比較的簡単で外科手術を必要としません。訪問歯科診療でも対応しやすく、施設入居後も継続的なケアを受けやすいという利点があります。
一方、インプラントは固定式のため介護者による清掃が難しく、セルフケアできなくなると衛生管理が極めて困難です。ただし、インプラントオーバーデンチャーなら、安定性がありながら着脱も可能という選択肢もあります。
高齢者がインプラントで失敗しないための必須条件
全身管理に対応した高齢者治療の実績豊富な歯科医院
高齢者の治療実績が豊富な歯科医院を選ぶことが第一条件です。経験豊富な医師は、加齢に伴う身体的変化や持病を考慮した治療計画を立てられます。
全身管理ができる体制が整っているかも重要です。持病がある場合、かかりつけの内科医と連携できる歯科医院なら、より安全な治療が可能です。術前の検査を丁寧に行い、CTスキャンなどで骨の状態を詳細に把握する医院を選びましょう。
家族の同意と将来のケア計画を含めたカウンセリング
老後のインプラント治療では、ご家族を含めた十分な話し合いが欠かせません。
将来的に本人だけでケアを続けることが難しくなる可能性があるため、治療前にご家族にも説明を受けてもらい、将来のケアについて話し合っておくことが重要です。認知症や要介護状態になった場合のケア方法、通院のサポート、費用負担などについて具体的な計画を立てましょう。
良心的な歯科医院は、メリットだけでなくデメリットやリスクについても誠実に説明してくれます。万が一セルフケアが困難になった場合の対応策も、治療計画に含めておくことが大切です。
老後のインプラントに関するよくある質問Q&A
70代・80代でもインプラント手術は可能か
年齢だけを理由にインプラント治療ができないということはありません。80代でも治療を受けられている方は多くいます。
重要なのは年齢そのものではなく、全身の健康状態や骨の状態です。持病が適切にコントロールされており、顎の骨に十分な厚みがあれば、高齢でも治療は可能です。
ただし、コントロールされていない糖尿病や重度の骨粗鬆症がある場合、服用している薬の影響で手術が困難な場合、手術に耐えられる体力がない場合は、治療を見送ることがあります。
まずは、インプラント治療の経験が豊富な歯科医院で詳しい検査とカウンセリングを受けることをおすすめします。
施設入居後のメンテナンスはどうすればよいか
介護施設に入居した後も、インプラントの定期的なメンテナンスは必要です。通院が難しくなることを想定した対策を立てておきましょう。
入居する施設を選ぶ際に、歯科医師による訪問診療が受けられるかを確認しましょう。訪問歯科診療に対応している施設なら、施設内でメンテナンスを受けられます。
インプラント治療を受けた歯科医院が訪問診療に対応しているかも事前に確認してください。施設のスタッフには、インプラントは取り外しができないこと、毎日の丁寧な歯磨きが必要なことを理解してもらいましょう。適切なメンテナンスが難しい状況になった場合は、インプラントを撤去するという選択肢もあります。これについても事前に歯科医師と相談しておくことをおすすめします。
まとめ
老後のインプラント治療には、外科手術のリスク、持病の影響、セルフケア困難によるインプラント周囲炎、高額な費用負担、再治療の難しさといったデメリットがあります。一方で、しっかり噛めることによる食事の質向上や認知症予防などのメリットも大きいのが事実です。入れ歯との比較では、食事の楽しみではインプラント、介護時の管理では入れ歯にそれぞれ利点があります。治療を検討される際は、高齢者治療の実績豊富な歯科医院を選び、将来のケア計画についても家族と話し合いましょう。
