2025.10.20
インプラント
歯を失ってしまった方の中には、インプラント治療と同時に歯並びも整えたいとお考えの方が多くいらっしゃいます。しかし、「どちらの治療を先に行うべきか」「費用はどれくらいかかるのか」と悩まれる方も少なくありません。
この記事では、インプラントと歯並び矯正を両方行う場合の治療法のパターン、費用相場、期間の目安について、分かりやすく解説します。治療計画を立てる際の参考にしていただければ幸いです。

インプラントと歯並び矯正の治療法3パターン
インプラント治療と矯正治療を併用する場合、お口の状態や治療の目的によって、最適なアプローチが異なります。ここでは代表的な3つのパターンをご紹介します。
パターン1 矯正治療が先インプラントが後
最も一般的なのは、矯正治療を先に行う方法です。
インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込むため、一度埋入すると動かすことができません。そのため、先に歯列矯正で歯並びを整えてから、最適な位置にインプラントを埋入することで、理想的な噛み合わせと見た目を実現できます。
矯正治療によって不要な隙間を埋めたり、歯を適切な位置に移動させたりすることで、インプラントを埋め込む本数を減らせる可能性もあります。また、全体のバランスを考慮した治療計画が立てられるため、治療後の仕上がりも美しくなります。
ただし、矯正治療中は歯が欠損した状態が続くため、見た目が気になる場合は仮歯を使用することもできます。矯正治療がある程度進んだ段階でインプラント手術を行うケースもあり、タイミングは歯科医師と相談して決定します。
パターン2 インプラントが先矯正治療が後
例外的に、インプラント治療を先に行う場合もあります。
歯が欠けている状態が長く続くと、食べ物をしっかり噛めない、発音がしにくい、呼吸に影響が出るなど、日常生活に支障をきたす場合があります。このような状況では、まずインプラントで失った歯の機能を回復させてから、矯正治療に移行します。
また、インプラントの状態が良好であれば、矯正治療の際に固定源として活用できるというメリットもあります。インプラントは骨にしっかり結合しているため動かないので、他の歯を引っ張る支点として利用できるのです。
ただし、インプラントを先に行う場合は、治療の難易度が高くなります。インプラント治療を担当する歯科医師と矯正治療を担当する歯科医師の密な連携が必須となるため、両方の治療に対応している歯科医院を選ぶことが重要です。
パターン3 インプラント矯正(アンカースクリュー)の活用
アンカースクリューと呼ばれる小さなネジを顎の骨に埋め込み、それを固定源として歯を動かす方法があります。これは「インプラント矯正」とも呼ばれています。
アンカースクリューは直径1.4mm、長さ6〜10mm程度の非常に小さなチタン製のネジで、矯正治療のために一時的に使用します。従来のヘッドギアなどの装置と異なり、患者さんの協力に頼ることなく、24時間休みなく歯を引っ張り続けることができるため、治療期間の短縮にもつながります。
特に、出っ歯を治すために前歯を大きく後方に下げたい場合や、奥歯を後ろに移動させたい場合に効果的です。従来なら外科手術が必要だった症例でも、アンカースクリューを使用することで手術なしで治療できる可能性があります。
矯正治療が終了したら、アンカースクリューは除去します。埋入も除去も短時間で完了し、痛みもほとんどありません。
治療法別の費用と期間の目安
インプラント治療と矯正治療を併用する場合、それぞれの治療費が必要になるため、トータルの費用と期間を事前に把握しておくことが大切です。
インプラント治療の費用相場と内訳
インプラント治療は自由診療のため、1本あたり30万〜40万円程度が一般的な費用相場です。地域や歯科医院、使用するインプラントのメーカーによっても変動します。
費用の内訳は以下の通りです。
- 検査・診断料:1万5千円〜5万円
- インプラント体(人工歯根):10万〜20万円
- アバットメント(連結部分):3万〜5万円
- 上部構造(人工歯):5万〜20万円
- 手術費用:含まれる場合と別途の場合あり
前歯の場合は審美性が重視されるため、人工歯の製作費が若干高くなる傾向があります。また、骨が不足している場合は、骨造成手術が別途必要になり、追加で20万円程度かかることがあります。
歯列矯正の種類別費用相場
歯列矯正の費用は、矯正方法や治療範囲によって大きく異なります。
全体矯正の場合:
- 表側ワイヤー矯正:60万〜100万円
- 裏側ワイヤー矯正:100万〜150万円
- マウスピース矯正:70万〜120万円
部分矯正の場合:
- 前歯のみの矯正:20万〜50万円
さらに、治療期間中の調整料が毎月3,000円〜6,000円程度かかります。治療終了後は、歯の後戻りを防ぐための保定装置(リテーナー)と保定期間の観察料も必要です。
アンカースクリューを使用する場合は、1本あたり2万〜5万円程度、または複数本でも一律5万円程度の料金設定をしている歯科医院もあります。
治療全体の期間シミュレーション
治療の流れと期間の一例をご紹介します。
矯正治療を先に行う場合:
- 矯正治療:1年〜3年
- 保定期間(必要に応じてインプラント埋入):1年〜3年
- インプラント治療:3ヶ月〜6ヶ月
トータルで2年〜7年程度かかる計算になります。ただし、矯正治療がある程度進んだ段階でインプラント手術を行うケースでは、全体の治療期間を短縮できることもあります。
インプラント治療を先に行う場合:
- インプラント治療:3ヶ月〜6ヶ月
- インプラントの安定期間:2ヶ月〜3ヶ月
- 矯正治療:1年〜3年
- 保定期間:1年〜3年
こちらもトータルで2年半〜7年半程度となります。
治療期間は個人の状態によって大きく異なるため、あくまで目安としてお考えください。
治療前に知るべき注意点とリスク
インプラントと矯正治療を併用する場合、いくつか注意すべきポイントがあります。
インプラント治療が先の場合の制約
インプラントを先に埋入してしまうと、その位置から動かすことができないため、矯正治療に制限が生じる可能性があります。
インプラントと天然歯の間に隙間ができてしまったり、理想的な歯並びを実現できなくなったりするリスクがあります。そのため、インプラントを先に行う場合は、事前に綿密な治療計画を立て、矯正治療の専門家とインプラント治療の専門家が連携することが不可欠です。
また、治療の難易度が上がることで、治療期間が延びたり、費用が増加したりする可能性もあります。
歯周病や顎の骨の状態による影響
歯周病がある場合、まず歯周病の治療が最優先となります。歯周病が進行していると、矯正治療で歯を動かすことが困難になるだけでなく、インプラント手術後の感染リスクも高まります。
また、インプラントを埋入するには、十分な顎の骨が必要です。歯を失ってから時間が経過している場合、骨が吸収されて薄くなっていることがあります。この場合は、骨造成と呼ばれる骨を増やす処置が必要になり、追加の費用と期間がかかります。
治療を始める前に、精密検査を受けて、自分のお口の状態を正確に把握することが重要です。
インプラントと歯並びに関するQ&A
治療中の痛みや腫れ
インプラント手術は局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔が切れてくると多少の痛みを感じることがありますが、鎮痛剤で対処できる程度です。腫れも2〜3日程度で治まることが一般的です。
矯正治療では、装置を調整した直後に歯が動く痛みを感じることがありますが、数日で慣れることが多いです。
医療費控除の対象になるか
はい、インプラント治療も矯正治療も医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が10万円を超える場合、確定申告をすることで税金の一部が還付される制度です。インプラントや矯正治療は高額になることが多いため、医療費控除を活用することで、実質的な負担額を軽減できます。
ただし、矯正治療の場合、審美目的ではなく噛み合わせの改善など機能面での必要性が認められる場合が対象となります。治療開始前に、歯科医師に診断書を作成してもらうことをおすすめします。
まとめ
インプラントと歯並び矯正を併用する場合、基本的には矯正治療を先に行い、その後インプラントを埋入するのが一般的です。例外的にインプラントを先に行うケースもありますが、その場合は専門家同士の連携が重要になります。
トータルの費用は、インプラント1本あたり30万〜40万円、矯正治療が60万〜120万円程度が目安です。治療期間は2年〜7年程度かかることが多く、長期的な計画が必要です。治療を検討されている方は、まず信頼できる歯科医院でカウンセリングを受け、ご自身に最適な治療計画を相談することをおすすめします。
