2026.5.25

インプラント

インプラントのぐらつき原因と対処法!放置のリスクや修理費用を解説

インプラントに突然ぐらつきを感じると、「抜けてしまうのでは」「また手術が必要なのでは」と不安になりますよね。インプラントのぐらつきには、ネジの緩みのような比較的軽度なものから、インプラント周囲炎による顎の骨の吸収といった深刻なものまで、さまざまな原因が考えられます。

この記事では、インプラントがぐらつく主な原因と緊急時の対処法、放置した場合のリスク、そして歯科医院での治療内容と費用の目安をわかりやすく解説します。

インプラントのぐらつき発生時の緊急対処法

インプラントのぐらつきに気づいたら、まず落ち着いて以下の3つの点を守ってください。歯科医院を受診するまでの間、症状の悪化を防ぐことがとても重要です。

指や舌で患部を触る行為の禁止

ぐらつきが気になっても、指や舌で繰り返し触るのは厳禁です。 触ることで患部に余計な力が加わり、緩みや炎症がさらに悪化する可能性があります。気になる気持ちはわかりますが、できるだけそっとしておくことが大切です。

市販の接着剤による自己修復の回避

「被せ物がぐらついているなら、自分で接着剤で固定してしまおう」と考える方もいらっしゃいますが、市販の接着剤による自己修復は絶対に行わないでください。 市販品はインプラント専用ではなく、使用することで歯科医院での正確な診断・治療が難しくなります。また、不適切な接着は内部に細菌を閉じ込め、インプラント周囲炎などの深刻なトラブルを招く恐れがあります。

硬い食べ物の摂取制限と反対側の歯での咀嚼

ぐらついているインプラントに強い力がかかると、状態がさらに悪化するリスクがあります。硬いものや粘り気のある食べ物(せんべい、ガム、硬い肉など)の摂取は控え、できるだけ反対側の歯で噛むようにしてください。 柔らかい食事を心がけることで、患部への負担を最小限に抑えることができます。

インプラントがぐらつく4つの主な原因

インプラントのぐらつきの原因は1つではありません。まず「何が原因でぐらついているのか」を把握することが、適切な治療への第一歩です。

人工歯を固定するスクリューの緩み

インプラントの被せ物(人工歯)は、アバットメントと呼ばれる連結部品を介して、スクリュー(小さなネジ)で固定されています。 日々の食事や咀嚼による繰り返しの力によって、このネジが少しずつ緩んでくることがあります。

スクリューの緩みは、インプラントのぐらつきの中でも比較的多く見られる原因です。インプラント体(顎の骨に埋まっている人工歯根)自体には問題がないケースが多く、歯科医院でネジを締め直すことで比較的簡単に解決できることがほとんどです。

被せ物を固定するセメントの劣化

スクリューではなく、セメント(接着剤)で被せ物を固定しているタイプのインプラントでは、経年劣化によってセメントが溶け出したり、剥がれたりすることでぐらつきが生じる場合があります。 特に、治療から数年が経過したインプラントで起こりやすい現象です。この場合も、インプラント体に問題はないことが多く、被せ物を新たに作り直したり、再接着したりすることで対応できます。

インプラント周囲炎による顎の骨の吸収

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲の組織に起こる炎症で、「インプラントの歯周病」とも呼ばれています。歯磨き不足などによりインプラント周囲に細菌が蓄積すると、歯肉の炎症(インプラント周囲粘膜炎)から始まり、進行すると顎の骨(インプラント体を支えている骨)がどんどん吸収されていきます。

骨の吸収が進むと、インプラント体そのものがぐらつくようになります。これはネジの緩みよりも深刻な状態であり、早急な治療が必要です。インプラント周囲炎は、日本ではインプラント治療を受けた方の約10〜20%に発症するとも言われており、決して珍しいトラブルではありません。

インプラント体自体の破折

まれではありますが、インプラント体(チタン製の人工歯根)そのものが折れてしまう(破折) ことがあります。原因としては、噛み合わせの問題、就寝中の歯ぎしり・食いしばり、インプラント体への過度な力のかかり方などが挙げられます。インプラント体の破折は、4つの原因の中で最も深刻であり、ほとんどの場合、インプラント体を撤去して再手術が必要になります。

原因を特定するセルフチェック項目

以下のチェックポイントを確認することで、ぐらつきの緊急性や原因のおおよその見当をつけることができます。ただし、自己判断はあくまでも目安です。いずれの場合も、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。

痛みや出血の有無による緊急性の判断

症状考えられる状態緊急性
痛みや出血がないネジの緩み・セメントの劣化の可能性が高い早めに受診(数日以内)
歯肉が赤く腫れている・出血するインプラント周囲炎の疑いできるだけ早く受診
強い痛みがある・膿が出るインプラント周囲炎の進行・感染の疑い至急受診
激しい痛みや大きなぐらつきがあるインプラント体の破折の疑い至急受診

痛みがないからといって放置は禁物です。 インプラント周囲炎は初期段階では痛みを感じにくく、気づいたときには骨の吸収がかなり進んでいるというケースも少なくありません。

揺れている部位が被せ物か土台かの見分け方

ぐらつきの場所を確認することで、原因をある程度絞り込めることがあります。

被せ物(人工歯)だけがぐらついている場合は、ネジの緩みやセメントの劣化が原因である可能性が高く、比較的軽度のトラブルです。歯冠部分(見えている白い部分)だけが動く感覚で、インプラント体自体は安定していることが多いです。

インプラント全体(根元から)がぐらついている場合は、インプラント周囲炎による骨の吸収や、インプラント体の破折が疑われます。この場合は深刻な状態である可能性が高く、早急な受診が必要です。

ぐらつきを放置するリスク

「痛くないし、少しだけ様子を見よう」と放置してしまう方も少なくありませんが、インプラントのぐらつきを放置することには大きなリスクが伴います。

インプラント体の脱落と再手術の発生

ネジの緩みによる軽度のぐらつきでも、放置すると緩みがどんどん進行し、最終的には被せ物が取れてしまう恐れがあります。また、インプラント周囲炎を放置した場合、炎症が深部まで広がり、インプラント体を支えている顎の骨がさらに失われ、最終的にはインプラント体を撤去しなければならなくなる可能性もあります。撤去後に再びインプラント治療を行うには、骨の状態によっては骨を増やす手術(骨造成術)も必要となり、治療期間も費用も大幅に増大してしまいます。

周囲の健康な歯や顎の骨への悪影響

インプラント周囲炎の細菌感染が広がると、インプラント周囲の炎症にとどまらず、隣接する健康な天然歯の歯周組織にも悪影響を与えることがあります。さらに、顎の骨の吸収が広範囲に及ぶと、将来的に他のインプラントや義歯治療を行う際にも支障が出てくる可能性があります。インプラントのぐらつきを放置することは、口腔全体の健康にも関わる問題です。

歯科医院での治療内容と費用相場

ぐらつきの原因が特定されたら、原因に合わせた治療が行われます。

ネジの締め直しや洗浄の処置

ネジの緩みが原因の場合は、被せ物を取り外し、専用の器具でスクリューを正しいトルク(締め付け強度)で締め直す処置が行われます。それほど大掛かりな治療ではなく、費用も比較的安価です。費用の目安は5,000〜20,000円程度(保険適用外の場合)とされていますが、被せ物を新たに作り直す必要がある場合はさらにかかることがあります。

セメントの劣化が原因の場合は、古いセメントを除去し、清掃・洗浄した上で再接着または新しい被せ物の作製が行われます。

インプラント周囲炎の外科的治療

インプラント周囲炎の場合、軽度であれば歯科医院でのクリーニング(歯石・細菌の除去)や薬の投与で改善が見込めることがあります。しかし、骨の吸収が進んでいる場合は外科的な治療(フラップ手術)が必要です。感染したインプラント周囲の組織を清掃し、必要に応じて骨を再生させる治療(骨再生療法)を行うこともあります。費用は数万円〜十数万円程度と幅があり、重症度によって大きく異なります。

再手術が必要な場合の費用目安

インプラント体の破折や重度のインプラント周囲炎によってインプラント体を撤去・再埋入する場合、費用は大幅に増加します。インプラント体の撤去だけで数万円、再手術(再埋入)には30〜50万円以上かかることが一般的です。骨の状態によっては骨造成術が必要となり、さらに費用と期間が追加されます。早期に対処するほど治療の選択肢が広がり、費用も抑えられる傾向があるため、気になる症状は早めに相談することが大切です。

インプラントのぐらつきを防ぐメンテナンス

インプラント治療の長期的な成功には、治療後のケアが非常に重要です。適切なメンテナンスを続けることで、ぐらつきのリスクを大きく減らすことができます。

歯科医院での定期検診とプロフェッショナルケア

インプラント治療後は、3〜6ヶ月に1回の定期検診が推奨されています。定期検診では、インプラント周囲の歯石・細菌のクリーニング、噛み合わせの確認、インプラントの状態チェックなどが行われます。自分では取り除けない汚れをプロが除去することで、インプラント周囲炎の予防につながります。他院でインプラントを入れた方でも、現在通っている歯科医院で診てもらえることがほとんどですので、気軽にご相談ください。

また、歯ぎしり・食いしばりのある方はインプラント体に過度な力がかかりやすいため、ナイトガード(マウスピース)の使用を勧められることもあります。

インプラント専用の歯ブラシやフロスによるセルフケア

毎日のセルフケアも、インプラントを長持ちさせるために欠かせません。インプラント周囲は天然歯よりも構造が異なるため、通常の歯ブラシだけでは汚れを落としきれないことがあります。

  • インプラント対応の歯ブラシ(やわらかめ): 歯肉を傷つけず、インプラント周囲を丁寧に磨けます
  • 歯間ブラシ・デンタルフロス: インプラントと歯肉の隙間や隣接する歯との間の汚れを除去します
  • ウォーターフロス(口腔洗浄器): 水流でインプラント周囲の細菌を効果的に除去できます

正しいケア方法については、定期検診の際に歯科衛生士に相談することをおすすめします。

▼ あわせて読みたい

「インプラントメンテナンスをしないとどうなる?放置のリスクと費用」

メンテナンスを怠った場合のリスクや、放置するとかかる治療費の目安を詳しく解説しています。インプラントを長く使い続けたい方はぜひご覧ください。

まとめ

インプラントのぐらつきには、ネジの緩みや接着剤の劣化といった比較的軽度な原因から、インプラント周囲炎による骨の吸収など深刻なものまであります。痛みがなくても放置すると再手術が必要になるリスクがあるため、ぐらつきを感じたらできるだけ早く歯科医院を受診することが大切です。また、日頃のセルフケアと定期的なメンテナンスによって、インプラントを長く健康に保つことができます。

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この記事の監修医師プロフィール

川越 亮利 先生

医療法人Saraswati 川越歯科医院 理事長 / 歯科医師 川越 亮利 (Akitoshi Kawagoe)

専門分野:インプラント治療 / 補綴治療(入れ歯・義歯) / 予防歯科

広島大学第2補綴科での臨床研修を経て、海外大学(Indonesia Mahasaraswati University)にてインプラント科の客員講師を務めた経歴を持つ歯科医師。
国内の学会活動に加え、海外での歯科ボランティアや技術指導にも精力的に参加。現地の限られた環境下での治療経験や、学生への指導経験を活かし、難症例にも対応可能な「長持ちするインプラント治療」を探求し続けている。
現在は広島市中区江波にて、地域医療と世界レベルの技術の融合を目指して診療を行う。

【主な所属・資格】
  • Mahasaraswati University 補綴科・インプラント科 元客員講師
  • KISS(Kansai Implant Study Society)所属
  • 広島大学第2補綴科 臨床研修医 修了
  • 月星先生CEセミナー アドバンスコース修了

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